どうなる?愛知県公立中高一貫校問題

子育て・教育
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愛知県の発表まとめ

※主に注目度の高い探求学習実施型について触れております。
導入の経緯

・県立高校の欠員が徐々に増加
・2035年には中学校卒業見込みが7万人から5万7千人へと減少見込み
・県立高校の魅力化、特色化、再編へ

ねらい
チェンジ・メーカーを育てる
~自分らしさの探求と想像・チャレンジ~
~一人一人異なる個性をもつ子どもたちの可能性を最大限引き出す学びの実現~
~誰もが社会の変革者となる学びの推進~

「チェンジ・メーカー」というあまり聞きなれない言葉を使用していますが、他の地域の公立中高一貫校や私立進学校が掲げるような生徒の個性を最大限に伸ばしこれからの社会に変化を起こしてくれるような存在を育成することがねらいのようです。リーダーという言葉で表現されていませんが、近い意味のようです。

2025年4月開校(第一次導入校

地区学校名中学校学級数(現)高校タイプ
名古屋明和高校普通コース
2学級80人
普通コース
8学級
SSH実施校
知多半田高校普通コース
2学級80人
普通コース
8学級
SSH実施校
西三河刈谷高校普通コース
2学級80人
普通コース
10学級
SSH実施校
海部津島高校国際探求コース
2学級80人
普通コース
9学級
グローバル探求実施校

SSH(スーパーサイエンスハイスクール)とは…

文部科学省では、将来国際的に活躍しうる科学技術人材の育成を図るため、先進的な理数系教育を実施する高等学校等を「スーパーサイエンスハイスクール」として指定し、理科・数学等に重点を置いたカリキュラムの開発・実践や課題研究の推進、観察・実験等を通じた体験的・問題解決的な学習等を平成14年度より支援しています。ここに本事業にかかる情報を掲示いたします。

文部科学省HPより
地区学校名中学校学級数(現)高校タイプ
名古屋明和高校音楽コース
1学級20人
音楽科
1学級
音楽科設置校

2025年4月開校(第一次導入校)

地区学校名中学校学級数(現)高校タイプ
西三河豊田西高校普通コース
2学級80人
普通コース
9学級
SSH実施校
東三河時習館高校普通コース
2学級80人
普通コース
8学級
SSH実施校
西三河西尾高校国際探求コース
2学級80人
普通コース
9学級
グローバル探求実施校

中高一貫校としてどのような学びを実施するのか

SSH実施校の場合
自分でテーマを決めて研究する「課題研究」を中学校段階から時間をかけて取り組み「生徒がじっくりと研究テーマを探す」「実験で試行錯誤をする」「テーマを途中で見直す」など長期に渡って自律的な探求学習を行います。
②中学校段階から大学・企業・研究所への訪問や、高度な実験や国際交流などを行い、生徒に興味関心を高めたり探求心を引き出したりしながら教養を広めていきます。

また教科の学習に関して、『中学校と関連深い高等学校の学習内容に中学校段階からしっかり触れ、より深い学びに取り組む。』とあり中高一貫校だからこそできる学びといえる。
そして誤解されがちな点だが、探求を深めるための先取りは行うが(上記のように高等学校の学びに触れるということ)、大学受験に特化して授業進度を早めることは目指さない

SSHの具体的な取り組みはコチラから。
現在SSHに指定されている学校が実際にどのようなことを実践しているかを知ることができるので、今後のイメージが湧くでしょう。

グローバル実施校の場合
①国際探求コースを設け、国際的な視点を持って探求的な学びに取り組む
国際バカロレアの導入を目指す

国際バカロレアとは…
国際バカロレア機構(本部ジュネーブ)が提供する国際的な教育プログラム。
国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)は、1968年、チャレンジに満ちた総合的な教育プログラムとして、世界の複雑さを理解して、そのことに対処できる生徒を育成し、生徒に対し、未来へ責任ある行動をとるための態度とスキルを身に付けさせるとともに、国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)を与え、大学進学へのルートを確保することを目的として設置されました。
現在、認定校に対する共通カリキュラムの作成や、世界共通の国際バカロレア試験、国際バカロレア資格の授与等を実施しています。

文部科学省IB教育推進コンソーシアムより

教科学習に関してはSSH実施校と同様に大学受験に特化して授業進度を早めることは目指さない

併設学校の教員について
・中学校教員と、中学校の免許を持つ高等学校教員を配置
・中高一貫校に勤務する教員を別枠で確保

パブリックコメントの県の考えで触れられているが、教員不足は深刻なようである。
別枠で確保するというが、そもそも通常の公立小中高の教員が不足しているのにも関わらず、質の高い教員を公立中高一貫校のためだけに確保ができるのかはやや疑問である。

選考方法

内容
適性検査小学校学習指導要領の範囲内。思考力・判断力・表現力・課題解決力などを総合的に測る。
面接中高の6年間学び続ける意欲や志望動機、適正、コミュニケーション能力など。
調査書今後検討調査書はなし。直近の通知表を提出
その他・明和高校の併設中学校(音楽コース)は実技検査を実施。
・抽選の導入は今後検討。

進路変更はできるのか

併設高校と異なる進学先を希望する生徒は高校入試で他の高校に進学も可能

メリット①学費の負担の軽減

公立中高一貫校は、公立学校として運営されているため、基本的には無償で学ぶことができます。
私立学校に比べて学費の負担が軽減されるため、経済的な負担を抑えたい保護者にとって魅力的な学校です。

メリット②公平性と多様性

公立中高一貫校は、入学試験に合格した生徒を対象にしているため、選抜された優秀な生徒が集まります。そのため、学校内の教育水準が相対的に高くなる傾向があります。また、各地から生徒が入学できるため、多様性も保たれます。

メリット③知名度ある学校に高校受験介さず入学できる

愛知県は公立王国でも知られている。
旭丘高校・岡崎高校を筆頭に大学進学実績は私立高校に勝るほどである。
そこに今回明和高校や刈谷高校や豊田西高校など地元では名の知れた高校が中高一貫校が併設型されることになった。
高校受験よりも先に、中学から通うことができ且つ6年間というゆとりある学びと学校生活を送ることができるのは大きなメリットでしょう。

デメリット①倍率が高く不合格の可能性も

首都圏と同様に人気が集まることは間違いないでしょう。
愛知県にある国立中学校の名古屋大学教育学部附属中学校の2022年度の入試倍率は、男子が約6倍、女子が約8倍を考えると、同等の倍率が予想されます。
愛知県内のトップ3校である東海中学校・南山中学校女子部・滝中学校のそれぞれの倍率を比較してもその高さがわかるでしょう。

募集人数志願者数受験者数合格者数倍率
東海中学校3601071名972名420名約2.3倍
南山中学校女子部約200名(内部進学40名含む)713名686名174名約4.1倍
滝中学校252名1929名1825名666名約2.7倍
名古屋教育大学附属中学校約80名男子256名
女子327名
男子250名
女子317名
男子40名
女子40名
男子約6倍
女子約8倍
愛知教育大学附属名古屋中学校144名男女262名男女255名男女144名約1.7倍
愛知教育大学附属岡崎中学校144名非公表非公表非公表
2023年参考

デメリット②公立中高一貫は一人一校しか受験できない

私立中学校のようにそれぞれの学校ごとに別日の試験ではなく、試験日は同じ日になるでしょう。
同じ日の実施なら必然的に併願はできません。
首都圏を例にあげると、都立中高一貫校と国立中学は、受験日が2月3日と一緒です。
受験日がまだ発表されていませんが、愛知県も国立と公立中高一貫の受験日が同一の場合も考えられるでしょう。

検査日程検査内容
名古屋教育大学附属中学校検査Ⅰ・Ⅱ2023年1月7日(土)
検査Ⅲ  2023年1月8日(日)
検査Ⅰ学力検査 検査Ⅱ作文 検査Ⅲ面接
愛知教育大学附属名古屋中学校2023年1月23日(月)学力検査(国語・算数)
愛知教育大学附属岡崎中学校2023年1月15日(日)学力検査(国語・算数・社会・理科)
面接検査
2023年参考

デメリット③合格した場合は進学が基本

現在愛知県内にある国立中学校は名古屋大学教育学部附属中学校・愛知教育大学付属名古屋中学校・愛知教育大学付属岡崎中学校があります。
この三校は第一志望であること、そして合格したら必ず進学することが条件です。
例えば、名古屋教育大学附属中学校は男女各40名の募集に対して合格者はぴったり40名を出します。
もし、私立の東海中学校や南山中学校女子部や首都圏・関西の難関校に合格しても辞退をしなければいけません。
また応募資格として通学に要する時間が60分以内や愛知県内で保護者と同居の条件もあります。
詳細は各中学校の募集要項をご確認ください。

中学受験への誤解

愛知県の発表によると「受験テクニックや知識量を測る『学力検査』ではなく、思考力や判断力などを問う『適性検査』と面接試験を活用して合否を判定する方針。」とのこと。

しかしながら、結局のところ通常の私立中学受験の学習との違いが見当たらない。
以前の中学受験状況を知る方からは「私立中学受験はたくさんの知識が必要であり、テクニックを備え、難しい問題を解くことができる優秀な生徒を集めている。」と思われている。
もちろん最低限の知識は必要であるが、それを如何に運用できるかが私立中学合格のポイントである。知識に偏らず、思考力・判断力・表現力・読解力といった総合的な学力が求められている

私学の進学校は確かに優秀な生徒を集めていると言われても仕方がないでしょう。進学している生徒は基本的に偏差値が高い勉強ができる子ばかりです。
そうではない普通の生徒も私立中学に通っています。むしろ普通な子どもを6年間通してじっくりと育ててくれます。私立中学の校風によって様々ですが、指導の面倒見の良さがあるのも一つの特色です。
公立中高一貫校だけでなく私立中学の説明会やイベントに参加をしてみるのもよいでしょう。

公立中高一貫校が選抜するのは思考力・判断力・表現力・課題解決力などを総合的に持ち合わせ且つ意欲やコミュニケーション能力である。
私立が優秀な生徒を集めているなら、公立中高一貫は超優秀な生徒を集めているような気がしないでもない。

公立中高一貫受験をするポイント

①公立中高一貫の一択に絞らないこと

中学受験のメリットとしては、学校を自分で選ぶことができる点である。

通常なら住んでいる場所で決まる公立中学校から自らの自由意思で選ぶことができる。

だが、受験する親子の会話の中にこのような発言をする親も存在する。

「うちは◯◯中学校しか考えていないからね。不合格なら近くの公立中学校に進学して、高校受験でまた目指すからね。」

受験するのは誰でしょうか。

もし、子どもが受験に失敗して心に深い傷を負った時、誰が責任を取るのでしょうか。

過度なプレッシャーは子どもの将来を左右します。

また、せっかくたくさんの学校から選ぶ権利を得たにも関わらず第一志望しか進学を許されないのは、選択肢が与えられない通常の公立進学と何ら変わりません。

私学も含めた広い視野と子どもに心の余裕を持たせるためにも公立中高一貫校以外の私学の選択肢を持つことが必要です。

②学校の方針とのマッチング

今回、中高一貫校として明和・刈谷・豊田西と各地域でネームバリューのある学校が選ばれました。
しばしば保護者であるのが、学校の名前(有名校、偏差値の高さ)で子どもに薦めがちです。
将来のことを考え子どもにより良い学校に入れたいという親の思いがあるのも当然です。
しかし、学校ごとには教育理念や校訓、育てたい生徒像等といった特色があります。
学校の方針と保護者と子どもの方針が一致する必要があります。
公立中高一貫受験では、面接や調査表があります。
例えば、グローバルで活躍する次世代のリーダーの育成を目指すことを指針に愛知県の公立中高一貫は掲げているが、
子どもの性格や目指す方針が、果たしてその学校に合っていますか?

③始めるなら入塾はお早めに

愛知県は「受験競争の加熱に繋がらないように」と考えているようだが、実際は難しいでしょう。
現に県が公立中高一貫を設置発表以降、各塾がこぞって「◯◯中学対策講座開講」と打ち出している。既に競争と化している。
過去問があるまたは詳細な情報発表される前から対策講座が出ているのはなかなかおもしろいですが、おそらく他の地域の公立中高一貫校対策の流用になるでしょう。
学校の教科書範囲と発表しているから、学校の勉強がきちんと出来ているから大丈夫。と考えている方は一度他の地域でも構いませんので、是非公立中高一貫校対策の問題集を見てほしい。

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確かに内容は小学校の内容であるに違いないが、文字数の多さや複数提示される資料を読み解くような問題が出題される。
果たして、こういった問題を今の小学校の学習で対応できる力が付くのでしょうか。
しかも、限られた時間の中で読み解かなければなりません。

まとめ

コロナ禍で私立の対応の速さと効率の対応の遅さが浮き彫りになり、私学の人気も徐々に出始めた愛知県。
中高一貫校の導入で愛知県の教育が今後どのように変わっていくのか子育て世代は注目しているでしょう。
愛知県教育委員会の検討部会では「受験競争の過熱化を防ぐ適正検査では過度に難しい問題を出すべきではないとし、小学校の授業で培う思考力や判断力、表現力、課題解決力を測るものにする」として受験競争の過熱化にならないようにと強調していますが、現実は中学受験対策が必要であるにちがいないでしょう。
いくら公立中高一貫校に進学したから学費がほとんどないとはいえ、受験対策をするにあたって費用は大変かかります。一般的に中学受験対策が始まるのは3年生からが多いです。金銭面と子どもの意思などを十分に検討し、公立中高一貫校を目指すなら早く対策に動くとよいでしょう。